未経験から事務職を目指そうと思って調べていると、
「まずはMOSを取った方がいい」
「簿記があると転職に有利」
「資格がなくても事務職にはなれる」
いろいろな情報が出てきます。
でも、資格をひとつ取るにも、時間もお金もかかります。
頑張って取得したからといって、それだけで転職や昇給などが希望どおりに進むとも限りません。
だからこそ大切なのは、
「何のために資格を取るのか?」を最初に考えること。
未経験を補うためなのか。
興味のある仕事に近づくためなのか。
働きながら専門性を身につけるためなのか。
この記事では、私自身の資格取得経験と、採用・育成に携わってきた経験、キャリアコンサルタントとしての視点も交えながら、資格の必要性から、自分に合った資格の方向性まで一緒に整理していきます。
未経験から事務職へ。資格は本当に必要?
結論からいうと、資格がないから事務職になれない、というわけではありません。
未経験者の採用に携わっていたときも、「資格があるから採用」「資格がないから不採用」と、それだけで合否を決めることはありませんでした。
あくまで、これまでの経験や人柄、仕事への意欲などとあわせて見る判断材料のひとつです。
ただし、資格が採用でまったく意味を持たないわけでもありません。
たとえばMOSを持っていれば、WordやExcelなどを学んできたことがわかります。
簿記なら経理事務、TOEICなどの語学資格なら英語を使う仕事など、その人に紹介できる仕事や配属先の幅を考える材料にもなっていました。
🌷 採用担当のリアル
同じくらいの経験や人物評価の方が並んだ場合には、資格を持っている方が採用につながったケースもあります。
ただ、見ていたのは資格名だけではありません。
「どうしてその資格を取ったのか」
「学んだことを仕事でどう活かしたいのか」
という背景も大切にしていました。
たとえば、
「将来的には経理の仕事に就きたいと考えているので、簿記を勉強しています」
と話せる方なら、目指している方向もわかりやすく、その先の仕事やキャリアも一緒に考えやすくなります。
資格は、履歴書の資格欄を埋めるためだけのものではないんですね。
履歴書で採用担当が見ているポイントは、こちらの記事で詳しくまとめています。
「とりあえずMOS」の前に。何のために資格を取る?
未経験から事務職を目指すなら、MOSは有力な選択肢のひとつです。
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)は、WordやExcelなどMicrosoft Office製品の利用スキルを証明する資格です。
事務職で広く使われるスキルだからこそ、「まず事務職を目指したい」という方とも相性がいい資格といえます。
ただ、「事務職ならMOSらしいから」と、なんとなく勉強を始める前に一度考えてみてほしいことがあります。
私は、何のためにこの資格を取るんだろう?
たとえば、
① 未経験を補うため
パソコンスキルに自信がなく、基礎から学び直したい。
② やりたい仕事に近づくため
経理に興味があるから簿記を学ぶなど、希望する仕事に必要な知識を身につけたい。
③ 自分の専門性を育てるため
働きながら興味のある分野を見つけ、その知識を深めていきたい。
同じ資格でも、目的は人によって違います。
MOSも、早く事務職の戦力になるため、パソコンスキルを学び直すため、自信をつけるため……と考えれば、資格取得までの勉強そのものにも意味があります。
反対に、たくさんの資格を持っていても、
「なぜ取ったのか」
「これからどう使いたいのか」
が自分でもわからなくなってしまうことがあります。
資格の数を増やすことより、今の自分に必要な資格を選ぶこと。
まずはここから考えてみてください。
目指す仕事から逆算。事務職で役立つ代表資格
「結局、何を取ったらいいの?」
という方は、資格から仕事を探すのではなく、やってみたい仕事から逆算してみると選びやすくなります。
そのためにも、気になる求人があれば、まずは仕事内容や応募条件を見てみましょう。
「未経験歓迎って本当に応募していい?」「PC基本操作ってどのくらい?」と迷った方は、こちらの記事で求人票の読み解き方を紹介しています。
→ 未経験事務の求人票の見方|採用・派遣営業の経験から「企業側の意図」まで解説
💻 まず事務職の土台をつくりたい
Word・Excelなどの操作スキルを証明できます。
一般事務や営業事務など幅広い事務職で活かしやすく、パソコン操作に自信がない方の学び直しにも向いています。
MOSは独学でも学べますが、
「パソコン操作に自信がない」
「基礎から学んで、仕事で使えるレベルを目指したい」
「一人だと勉強が続くか不安」
という方は、パソコン教室で学びながら資格取得を目指す方法もあります。
💰 経理・会計の仕事に広げたい
企業のお金の流れや会計について学べる資格です。
経理事務を目指す方にもよく選ばれていて、まず3級を取得し、その後2級を目指す方も多く見てきました。
3級では基本的な商業簿記を学び、経理関連書類を適切に処理するための基礎知識を身につけます。
「経理に興味はあるけれど、まだ実務経験がない」という方にとっても、まず会計の基礎を学ぶ入口として考えやすい資格です。
さらに専門性を深めたい方は、商業簿記に加えて工業簿記・原価計算まで学ぶ2級へステップアップする選択肢もあります。
🖥 ITに強い事務を目指したい
ITに関する基礎知識を幅広く学ぶ国家試験です。
エンジニアになるための資格というより、ITを仕事で活用するための基礎知識を身につける位置づけで考えるとよいでしょう。
🤝 社会人としての基礎力を身につけたい
秘書検定・ビジネスマナー系の検定
敬語やビジネスマナー、相手に配慮した対応など、社会人として働くうえでの基礎を学べます。
未経験・若手採用では、テクニカルなスキルだけでなく、社会人としての基本的な振る舞いを学んでいることもひとつの安心材料になります。
🌏 英語を使う仕事に広げたい
TOEIC・英検など
英文事務や貿易事務など、英語を使う仕事を目指すなら語学力を示す材料になります。
ただし、資格を持っているだけでなく、求人によって求められるレベルや実務内容を確認することも大切です。
「どの資格が一番有利?」ではなく、「私はどんな仕事がしたい?」から選ぶ。
それが資格選びで迷いにくくなるひとつの方法です。
資格を取ってから応募する?「勉強中」でも転職活動はできる
「資格を取ってからじゃないと、未経験で応募するのは不安……」
そんな方もいると思います。
でも、資格取得まで転職活動を止める必要があるとは限りません。
実際の採用でも、
「事務職を目指してMOSを取得しました」
という方だけでなく、
「学生時代に英語を学んでいたことから、将来は英語を使う仕事に就きたいと考えています。そのため、現在TOEIC700点を目標に勉強しています」
と、資格取得に向けて勉強中のことを伝えてくれる方もいました。
大切なのは、資格の有無だけではなく、
なぜ勉強しているのか、その先で何をしたいのか。
ここが伝わることです。
未経験から事務職を目指すためにPCスクールへ通ったり、働きながら資格取得を目指したりすることも、「なぜその行動をしているのか」まで説明できれば、仕事への意欲を伝える材料になります。
これは志望動機でも同じです。「なぜ事務職を目指すのか」を自分の経験とつなげて考えると、より自分らしい志望動機を作りやすくなります。
「資格を取る」
「転職活動をする」
この2つを必ず順番に進めなくても大丈夫。
応募条件として資格が必須でなければ、勉強と転職活動を並行するという選択肢もあります。
資格は入社後でも遅くない。「事務+専門性」で自分の強みを育てる
資格というと、「就職や転職をする前に取るもの」というイメージがあるかもしれません。
でも、多くの方のキャリアを見てきて感じるのは、働き始めてから資格を取ることにも意味があるということです。
私自身も、社会人になってからビジネスマナーや秘書検定などを学び、働きながら資格取得を経験してきました。
キャリア支援に関わるなかでは、キャリアコンサルタントの資格も取得しています。
資格を取って感じたのは、肩書きや知識が増えることだけがメリットではないということ。
人のキャリアを支援するなかで迷ったときに、学んだ理論をもとに状況を整理したり、これまでとは違う切り口から考えたりできるようになりました。
それは、仕事に向き合ううえでの自信にもつながっています。
一方で、資格は取ったら終わりではありません。
実務と学びを重ねてこそ、資格で得た知識が仕事のなかで活きてくると感じています。
🌱 実際に見てきた、資格から広がったキャリア
| 今の仕事 | +専門知識・資格 | キャリアの例 |
|---|---|---|
| 一般・営業事務 | 簿記 | → 経理事務 |
| 一般・営業事務 | 英語+貿易実務検定 | → 貿易事務 |
| 人事・採用アシスタント | 労務知識・社労士 | → 採用+労務 |
| 金融系の一般事務 | 証券外務員など | → 専門業務・直接雇用への挑戦 |
| 一般事務 | ITの基礎+プログラミング学習 | → IT系職種へのキャリアチェンジ |
※資格を取れば必ず右側の仕事に就ける、という意味ではありません。これまでの実務経験に専門知識や学習を掛け合わせ、キャリアを広げていった例です。
特に、一般事務・営業事務として経験を積みながら簿記を学び、その後、経理事務へ進んだケースは何度も見てきました。
ほかにも、語学や貿易実務を学んで貿易事務へ進んだり、人事・採用の経験に労務の専門知識を加えたり。
最初に選んだ事務職が、その人のキャリアのゴールになるわけではありません。
まず事務職として経験を積む。
↓
自分の好きなこと・得意なことを知る。
↓
興味のある分野の知識を深める。
↓
自分なりの専門性を育てていく。
資格は、そんなふうに使うこともできます。
AI時代だからこそ、「資格を取れば安心」ではない
AIや自動化の進化によって、事務職の仕事内容もこれから変わっていくと考えられます。
特に、入力や転記などの定型的な業務は、これまで人が行っていた仕事の一部をAIやシステムが担う場面が増えていくでしょう。
だからといって、
「AIに仕事を取られないように、何か資格を取らなきゃ」
と焦る必要はありません。
資格を持っているだけで、将来の仕事が保証されるわけではないからです。
むしろ、
まず事務職として経験を積む
↓
自分の好きなこと・得意なことを知る
↓
興味のある分野を学び、知識と経験を深める
↓
自分なりの専門性を育てていく
という考え方も大切になっていきます。
定型的な仕事をこなすだけではなく、自分が興味を持てる分野を見つけ、その知識や経験を深めていく。
経理、人事・労務、貿易、ITなど、事務職としての経験を土台に専門性を育てていける方向はいくつもあります。
これからは、
専門知識 × 実務経験 × AIを使う力
を少しずつ掛け合わせていくことも、事務職として働き続けるひとつの方法になるはずです。
資格は、仕事を守ってくれる「お守り」ではありません。
「どんな仕事をしたいか」
「何ができるようになりたいか」
を実現するための手段のひとつです。
資格を取ること自体をゴールにしなくても大丈夫。
まず事務職として経験を積み、そのなかで自分の好きなことや得意なことを見つける。
そして、必要な知識を学びながら、自分なりの専門性を育てていく。
そんな資格との付き合い方も、これからの事務職には合っているのではないでしょうか。


